2008.03/13(Thu)
君に初恋、桜色。9−3
chapter9−3
石富はじっとお墓を眺めて、何か考えているみたいだったが、その凛とした横顔に、秋家はそっと話しかける。
「ね、先にお線香あげていい?」
「……え、ああ、そうだな」
枯れたしきびを花立から抜いて、墓石を掃除した後、石富が上から水をかけてくれた。新しいしきびを立て、お菓子とお酒を供えて、線香に火をつける。2本ずつ、順番にそれを立てて、秋家は顔の前で手を合わせて目を閉じた。
(次郎さん、あなたが亡くなって、8年経ちました。いつも1人なんだけど、今日はお2人に、俺の大事な人を紹介しますね)
今2人共側にいて、石富を見ていると思う。西澤は秋家が幸せになることを願ってくれていたから、今とても、笑顔で喜んでくれているだろう。
どうですか?かっこいいでしょう?でも中身もすごく、いい男なんです。
心の中でノロケて、秋家は口元だけでフフ、と微笑んだ。
しばらくして目を開け横を見ると、石富はまだ手を合わせていた。彼も心の中で、何か話しているのだろうか。横顔はとても真剣で、だから秋家はじっと、その手が下りるのを待った。
しばらくして目を開けた石富は、秋家を見てにこりと微笑み、ものすごく照れくさくて、でもとても嬉しいlことを言ってくれた。
「なおがお世話になりましたって、お礼言っといた。それと、これからめちゃくちゃ大事にしますからって」
「剣二……」
ありがとう、と言って秋家は笑った。
それから、秋家は石富に、西澤との出会いから彼が息を引き取るまでのこと、そして彼ら2人の若かりし日々のことなどを、全て話して聞かせた。
2丁目で知り合ったのだということも、そしてその出会いによって、ひどい生活を送っていた自分は救われたということも、きちんと話した。嘘は、1つも言わずに。
逃げていた間の乱れた生活のことなど、できれば言いたくはなかったが、そういう状態から西澤に助けられたのだから、隠したらいけないと思った。
とはいえ、そこまで男関係を詳しく説明できるほど厚顔ではないので、そこは大まかに話しただけだったが、それでも石富は少し、怒った顔をしていた。
「……昔のことだし、しょうがねぇけど……けどもう、俺以外とヤったら……絶対許さねぇぞ」
そう、睨まれて、ぞくりとした。嫉妬されてると思うと嬉しくて、不謹慎かもしれないけれど、ぞくぞくと喜びに体が震える。
そんなこと、するわけないのに。石富がいれば、他には何もいらないんだから。
「うん、許さなくていいよ。だって絶対しないから」
それに石富になら、たとえ殺されたってかまわない。
秋家がにっこり笑うと、毒気を抜かれたような顔をした石富は、周りをきょろきょろ見回してから、ちゅっと唇に掠め取るようなキスをした。
「…っ…もう、ここお墓……」
「だからだろ。2人のお墓を前に、誓いのキスだ」
誓いのキス。まるで結婚式のようなことを言った石富は、秋家の肩を抱いて、お墓に向かって宣言した。
「俺はこいつを……秋家尚和を、一生愛することを誓います」
その言葉に、秋家は目の奥が熱くなった。西澤に約束してくれるということは、秋家にとってすごく特別な意味を持つ。石富も、話を聞いてそれは理解してくれているはずだ。
だからこの場所は、神前と同じ、いや、特に信仰する存在を持たない秋家からすれば、それ以上に神聖な場所であると云ってもいい。
「俺も…っ……石富剣二を、一生、愛することを、誓います……」
だからここで『誓う』ことは、何よりも絶対的で、意味の深いこと。
石富は秋家を抱き締めて、つむじにキスをした。
もう、誰に見られていてもかまわない。石富もそう思っているのか、今度は周りを確認せずに、唇にもキスをしてくれた。
こんなところで、男2人が結婚式の真似事なんかして、傍から見れば滑稽かもしれない。でも、どう思われようと、そんなことはどうでもよかった。
ただ真剣に、お互いへの愛を誓う。そして、誰に祝福されなくても、西澤と次郎の2人だけが、お空の上でおめでとうと言ってくれれば、もうそれでいい。
唇を離して微笑み合った後、石富は秋家の手を握り、おでこをこつんと当ててきた。
「俺たちも同じ墓、入れるかな」
「え……」
その石富の言葉に、昔ここで西澤に言われたことを思い出す。
――君にいつか大事な人ができたら、一緒にここに入るといい。わしらと一緒だがね。
本当に、そんなことができるとは思っていなかったけれど……でも石富が望んでくれるなら、不可能ではないはずだ。ただ、そうなれる状況を作るのに、きっと想像では追いつけないほどの苦労があるだろうけれど。
だが、それを乗り越えた時、自分達は、彼らのように同じ場所で眠ることができる。
「入れるよ、きっと……だから、がんばろうね」
「ああ、そうだな」
秋家が言うと、石富は何もかもわかっているように、笑って頷いた。
また来ます、と2人で言ってから、駐車場に向かう。焼却炉にごみを捨てて車に乗り、戻る途中にスーパーに寄って、お茶の2リットルペットボトルを3本買った。
店に着くとすぐに厨房に行き、途中だったお弁当の準備を急ぐ。おかずは全て石富が作ってくれるので、秋家はとにかくおにぎりを握った。
食べ盛りの若い男の子が3人に、それにえつみと弥生は、あちこちの食べ放題やバイキングにしょっちゅう出掛けているというくらい、明らかに平均より大食いで、並の女子と考えたらいけないらしい。さらに石富もかなり食べるので、一応多く見積もって50個おにぎりを作った。
作り過ぎかもとは思ったけれど、余ればみんなに持って帰ってもらえばいいので、種類ごとに並べてタッパーに詰めた。鮭と梅干とおかかが10個ずつ、ツナマヨが20個。全部に海苔も巻いたので、けっこう重労働だった。
「腱鞘炎になりそう……」
「はは、ご苦労だったな。こっちももう終わる」
そして完成したおかずの重箱を見て、秋家は思わず声を上げてしまう。
「うわ、おいしそう……!すごいね、みんな喜ぶよ!」
「一応、プロですから」
いつぞや秋家が言ったようなセリフを言い、石富は得意気に笑った。
午後1時。
店にみんながいったん集まり、それから石富と秋家の車に分乗して、お花見会場になっている公園に向かった。
秋家の車には晴希と聖一が乗り、助手席に座っている晴希は見るからにうきうきしていて、それがとても可愛らしく、見ていてこちらも楽しくなった。
そして公園に着き、目に入ったその美しい景色に、みんな一斉にため息をつく。
桜は満開を少し過ぎたくらいで、散り始めに入っていた。まさに桜吹雪というように、ひらひら花びらが舞い散り、たくさん風に流れている。そして園内には桜だけでなく、菜の花もきれいに咲いていた。
「うわぁ、きれいね」
弥生は目をきらきらとさせ、桜を眺めている。やっぱり女の子だな、と思ったのも束の間、くるりと秋家を振り向き、さらに目を輝かせてこう言った。
「早くお弁当にしましょうよ、店長さん!アタシ場所取ってくる」
そしてダッシュで場所取りに向かった弥生に、隣にいたえつみが呆れたように呟く。
「あいつは完全に花より食い気だね。ま、私もそうだけどさ」
そして自分も弥生の後に続いて走って行った。
「荷物も持たずにあいつらめ……それにしても、きれいなもんだな。花見なんて、何年ぶりだろう」
後ろからの石富の声に、秋家もそうだね、と呟いた。
石富も、ずっと花見には行っていなかったらしい。秋家も、落ち着いて桜を見た記憶など、もう何年もないような気がする。
季節を、自然を、そして花を、美しいと思うことができるのは、心にそれを感じる余裕があり、幸せの証なのだよ、と西澤が言っていた。
そして今、秋家は桜を見て、心から美しいと思っている。
(幸せって、ことだよね)
きれいなもんだな、と言った石富も、また。
「さぁ、荷物運んで、弁当にすっか」
石富の言葉に、秋家も晴希達と同じように、はーい、と返事をした。
【More・・・】
秋家は風で乱れた髪を手で直し、石富の方を見た。石富はじっとお墓を眺めて、何か考えているみたいだったが、その凛とした横顔に、秋家はそっと話しかける。
「ね、先にお線香あげていい?」
「……え、ああ、そうだな」
枯れたしきびを花立から抜いて、墓石を掃除した後、石富が上から水をかけてくれた。新しいしきびを立て、お菓子とお酒を供えて、線香に火をつける。2本ずつ、順番にそれを立てて、秋家は顔の前で手を合わせて目を閉じた。
(次郎さん、あなたが亡くなって、8年経ちました。いつも1人なんだけど、今日はお2人に、俺の大事な人を紹介しますね)
今2人共側にいて、石富を見ていると思う。西澤は秋家が幸せになることを願ってくれていたから、今とても、笑顔で喜んでくれているだろう。
どうですか?かっこいいでしょう?でも中身もすごく、いい男なんです。
心の中でノロケて、秋家は口元だけでフフ、と微笑んだ。
しばらくして目を開け横を見ると、石富はまだ手を合わせていた。彼も心の中で、何か話しているのだろうか。横顔はとても真剣で、だから秋家はじっと、その手が下りるのを待った。
しばらくして目を開けた石富は、秋家を見てにこりと微笑み、ものすごく照れくさくて、でもとても嬉しいlことを言ってくれた。
「なおがお世話になりましたって、お礼言っといた。それと、これからめちゃくちゃ大事にしますからって」
「剣二……」
ありがとう、と言って秋家は笑った。
それから、秋家は石富に、西澤との出会いから彼が息を引き取るまでのこと、そして彼ら2人の若かりし日々のことなどを、全て話して聞かせた。
2丁目で知り合ったのだということも、そしてその出会いによって、ひどい生活を送っていた自分は救われたということも、きちんと話した。嘘は、1つも言わずに。
逃げていた間の乱れた生活のことなど、できれば言いたくはなかったが、そういう状態から西澤に助けられたのだから、隠したらいけないと思った。
とはいえ、そこまで男関係を詳しく説明できるほど厚顔ではないので、そこは大まかに話しただけだったが、それでも石富は少し、怒った顔をしていた。
「……昔のことだし、しょうがねぇけど……けどもう、俺以外とヤったら……絶対許さねぇぞ」
そう、睨まれて、ぞくりとした。嫉妬されてると思うと嬉しくて、不謹慎かもしれないけれど、ぞくぞくと喜びに体が震える。
そんなこと、するわけないのに。石富がいれば、他には何もいらないんだから。
「うん、許さなくていいよ。だって絶対しないから」
それに石富になら、たとえ殺されたってかまわない。
秋家がにっこり笑うと、毒気を抜かれたような顔をした石富は、周りをきょろきょろ見回してから、ちゅっと唇に掠め取るようなキスをした。
「…っ…もう、ここお墓……」
「だからだろ。2人のお墓を前に、誓いのキスだ」
誓いのキス。まるで結婚式のようなことを言った石富は、秋家の肩を抱いて、お墓に向かって宣言した。
「俺はこいつを……秋家尚和を、一生愛することを誓います」
その言葉に、秋家は目の奥が熱くなった。西澤に約束してくれるということは、秋家にとってすごく特別な意味を持つ。石富も、話を聞いてそれは理解してくれているはずだ。
だからこの場所は、神前と同じ、いや、特に信仰する存在を持たない秋家からすれば、それ以上に神聖な場所であると云ってもいい。
「俺も…っ……石富剣二を、一生、愛することを、誓います……」
だからここで『誓う』ことは、何よりも絶対的で、意味の深いこと。
石富は秋家を抱き締めて、つむじにキスをした。
もう、誰に見られていてもかまわない。石富もそう思っているのか、今度は周りを確認せずに、唇にもキスをしてくれた。
こんなところで、男2人が結婚式の真似事なんかして、傍から見れば滑稽かもしれない。でも、どう思われようと、そんなことはどうでもよかった。
ただ真剣に、お互いへの愛を誓う。そして、誰に祝福されなくても、西澤と次郎の2人だけが、お空の上でおめでとうと言ってくれれば、もうそれでいい。
唇を離して微笑み合った後、石富は秋家の手を握り、おでこをこつんと当ててきた。
「俺たちも同じ墓、入れるかな」
「え……」
その石富の言葉に、昔ここで西澤に言われたことを思い出す。
――君にいつか大事な人ができたら、一緒にここに入るといい。わしらと一緒だがね。
本当に、そんなことができるとは思っていなかったけれど……でも石富が望んでくれるなら、不可能ではないはずだ。ただ、そうなれる状況を作るのに、きっと想像では追いつけないほどの苦労があるだろうけれど。
だが、それを乗り越えた時、自分達は、彼らのように同じ場所で眠ることができる。
「入れるよ、きっと……だから、がんばろうね」
「ああ、そうだな」
秋家が言うと、石富は何もかもわかっているように、笑って頷いた。
また来ます、と2人で言ってから、駐車場に向かう。焼却炉にごみを捨てて車に乗り、戻る途中にスーパーに寄って、お茶の2リットルペットボトルを3本買った。
店に着くとすぐに厨房に行き、途中だったお弁当の準備を急ぐ。おかずは全て石富が作ってくれるので、秋家はとにかくおにぎりを握った。
食べ盛りの若い男の子が3人に、それにえつみと弥生は、あちこちの食べ放題やバイキングにしょっちゅう出掛けているというくらい、明らかに平均より大食いで、並の女子と考えたらいけないらしい。さらに石富もかなり食べるので、一応多く見積もって50個おにぎりを作った。
作り過ぎかもとは思ったけれど、余ればみんなに持って帰ってもらえばいいので、種類ごとに並べてタッパーに詰めた。鮭と梅干とおかかが10個ずつ、ツナマヨが20個。全部に海苔も巻いたので、けっこう重労働だった。
「腱鞘炎になりそう……」
「はは、ご苦労だったな。こっちももう終わる」
そして完成したおかずの重箱を見て、秋家は思わず声を上げてしまう。
「うわ、おいしそう……!すごいね、みんな喜ぶよ!」
「一応、プロですから」
いつぞや秋家が言ったようなセリフを言い、石富は得意気に笑った。
午後1時。
店にみんながいったん集まり、それから石富と秋家の車に分乗して、お花見会場になっている公園に向かった。
秋家の車には晴希と聖一が乗り、助手席に座っている晴希は見るからにうきうきしていて、それがとても可愛らしく、見ていてこちらも楽しくなった。
そして公園に着き、目に入ったその美しい景色に、みんな一斉にため息をつく。
桜は満開を少し過ぎたくらいで、散り始めに入っていた。まさに桜吹雪というように、ひらひら花びらが舞い散り、たくさん風に流れている。そして園内には桜だけでなく、菜の花もきれいに咲いていた。
「うわぁ、きれいね」
弥生は目をきらきらとさせ、桜を眺めている。やっぱり女の子だな、と思ったのも束の間、くるりと秋家を振り向き、さらに目を輝かせてこう言った。
「早くお弁当にしましょうよ、店長さん!アタシ場所取ってくる」
そしてダッシュで場所取りに向かった弥生に、隣にいたえつみが呆れたように呟く。
「あいつは完全に花より食い気だね。ま、私もそうだけどさ」
そして自分も弥生の後に続いて走って行った。
「荷物も持たずにあいつらめ……それにしても、きれいなもんだな。花見なんて、何年ぶりだろう」
後ろからの石富の声に、秋家もそうだね、と呟いた。
石富も、ずっと花見には行っていなかったらしい。秋家も、落ち着いて桜を見た記憶など、もう何年もないような気がする。
季節を、自然を、そして花を、美しいと思うことができるのは、心にそれを感じる余裕があり、幸せの証なのだよ、と西澤が言っていた。
そして今、秋家は桜を見て、心から美しいと思っている。
(幸せって、ことだよね)
きれいなもんだな、と言った石富も、また。
「さぁ、荷物運んで、弁当にすっか」
石富の言葉に、秋家も晴希達と同じように、はーい、と返事をした。
●米神さま
遠麗 | 2008.03.16(日) 03:45 | URL | コメント編集
●唯香様
唯香さま、いつもありがとうございます(^-^)
無事(?)終わりましたです〜♪
唯香さまのコメントにはたくさん励まされてきました。
心のオアシスです(。>_<。。)
剣二でよかったら、いくらでももらってやってくださいw
本当にありがとうございました。
またこれからがんばります!
無事(?)終わりましたです〜♪
唯香さまのコメントにはたくさん励まされてきました。
心のオアシスです(。>_<。。)
剣二でよかったら、いくらでももらってやってくださいw
本当にありがとうございました。
またこれからがんばります!
遠麗 | 2008.03.16(日) 03:41 | URL | コメント編集
●
何だかすごく目頭が熱くなりました(゜ーÅ) ホロリ
お墓の前で誓い合う二人に、ものすごく感動です!
この二人には是非とも同じお墓に入ってもらいたいです。
お墓の前で誓い合う二人に、ものすごく感動です!
この二人には是非とも同じお墓に入ってもらいたいです。
●管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2008.03.14(金) 11:01 | | コメント編集
●いいですね〜vv
想いが通じ合った後の2人の、穏やかに流れる時間に乾杯♪♪♪
剣二!やっぱり好き〜〜〜vv
これからは、思う存分甘やかしてあげてね〜〜vv
剣二!やっぱり好き〜〜〜vv
これからは、思う存分甘やかしてあげてね〜〜vv
水城 | 2008.03.14(金) 10:42 | URL | コメント編集
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無事終えることができました☆
彼らはきっと同じお墓に入れると思います。
2人でがんばるのでw
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
またよろしければ次回作も付き合いくださればと思います♪