2008.01/03(Thu)

君に初恋、桜色。2−3

chapter2−3

【More・・・】

 しばらく液晶画面を見つめていた秋家だったが、取るのを躊躇っているうちに電話は切れてしまった。だが、今から会おうなどと言われても行けるわけもないし、何より今日は1人でいると決めている日だ。それにとてもじゃないが、今はそんな気分にはなれない。

(ごめんね……)

 心の内で久家に謝ると同時に、秋家は少々不安になった。

 昨夜久家は、秋家の携帯を『貸して』とほぼ強引に奪い取ると、ナンバーとアドレスを自分の手で勝手に登録した。そして、その秋家の携帯から自分の携帯へと電話をかけ、メールを送り、それを登録する、というやり方で秋家の連絡先を得たのだ。それを見ていて、もしかして嘘のナンバーでも教えられたことがあるのかな、と久家の過去の恋愛を想像した。そうでなければ、普通あんなやり方はしないだろうから。

 基本的に温厚な秋家も、あれには少々不快になった。だが、9つも年下の青年にそんなことで怒るのもどうかと思ったし、小言を言うのもめんどうだったので、特に何か言う事はしなかったのだが。

「ふぅ……」

 秋家はため息をつき、焼酎をグラスに注いだ。つまみのカシュ−ナッツを1つ摘んで、口の中に放り込む。かりかりとそれを咀嚼しながら思い出すのは、あまり思い出したくもない、だが久家の存在に否も応も無く思い出されてしまう、“揉め事”の1つだった。

(もうあんなことにならないよう、気をつけなきゃ……)

 今から約2年前、秋家がゲイだということを、えつみと、そして石富に知られてしまうこととなる、本当に最悪だとしか言い様のない出来事があった。

 一昨年の12月、クリスマスもせまり、商店街のアーチにはきれいな装飾が飾られ、通りの中心には大きなクリスマスツリーも置かれ、商店街が賑わいを見せ始めた、そんな時期だった。

 当時秋家には、付き合い始めたばかりの5つ年下の恋人がいて、出会いはもちろん2丁目の店でのナンパだったが、秋家は彼のことがけっこう好きで、もしかしたらこのまま本気になれるかも、と淡い期待を抱いていたほど、とても恋愛に近い感情を持っていた。

 その当時26歳だった恋人の松橋(まつはし)は、証券会社に勤めるエリートサラリーマンで、若いが収入も高く、年のわりに落ち着いていて、頼りがいのある男だった。思わず年下であることを忘れて、甘えてしまうこともあるほど、包容力もあった。秋家は店を始めてから、関係した男に自宅の場所を教えたことはなかったが、彼なら教えても大丈夫かもしれない、と思えるほどに信用もしていた。

 だが、土日祭日きっちり休みのサラリーマンと違い、逆に秋家は、そういう日にこそ忙しい、サービス業である。12月に入りお互い忙しさが増したこともあり、会えることも少なくなり、付き合い始めて3ヶ月目にして連絡を取り合うペースも落ちていった。

 そしてクリスマスを数日後に控えた12月中旬、松橋から連絡が入り、23日からの3連休、1日でもいいから休みを取れないか、と言われた。祭日と日曜日を休めと言われても、それは無理だと秋家が断ると、松橋はびっくりするくらい電話の向こうで怒って声を荒げた。

――クリスマスくらい一緒にいてくれたっていいだろ!?ろくにデートもできねーってのに!

 松橋の怒号を聞いたのは初めてで、いつもは大人で優しい男だからこそ、その彼の本気の怒りというものに秋家は少し恐怖を覚えた。もしかすると、今まで溜め込んでいたものが爆発したのだろうか、と本当に怖くなったが、だからといって休むことはできないから、ごめんなさいと必死に謝った。すると今度は、『それなら3日間あんたの家に泊まる』と言い出したのだ。

 それは困る、と秋家は必死に断った。そんなことをされて、もし店の人間に、石富に見られでもしたら、なんて言い訳すればいいかわからない。それに、変な言い方だが、2階に男を待たせたままその下の店舗で石富と仕事をするなんて、秋家にはどうしても耐えられないと思った。

 だから、1日休むのは無理だけど、夜なら出ていけるから、と必死になだめて、3連休の間毎日、仕事が終わってから東京に行き、松橋と共に過ごした。夜9時半に閉店させてから東京に向かい、それから若い松橋のセックスの相手をして、そして朝に帰ってくる。これを3日も続けては、さすがに三十路を過ぎた体へは負担が大きく、3日目ともなると仕事中にふらふらして大変だった。

 松橋に車で送っていく、と言われたが、家を知られるのが嫌だったから大丈夫だと断った。彼になら教えてもいいかもしれない、と思っていたけれど、一緒にいたい、とキレられたことで、彼もやはり若い、と認識が変わってしまい、結局教えることは止めた。

 だがこのことが、松橋を本気で怒らせてしまうことになった。

テーマ : 自作BL連載小説 - ジャンル : 小説・文学

02:28  |  君に初恋、桜色。  |  CM(5)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●千絵さま

あけましておめでとうございます。
ご訪問ありがとうございました♪
もう半月過ぎてますが(w)、今年もよろしくお願いしますね☆
遠麗 | 2008.01.15(火) 21:19 | URL | コメント編集

●あけましておめでとうございます

遅ればせながらご挨拶に伺わせていただきました。
ブログとコミュの管理、お疲れ様です。
どちらの楽しませていただいてます。
今年もなにとぞよろしくお願いします^^
千絵 | 2008.01.11(金) 00:27 | URL | コメント編集

●唯香さま

あけましておめでとうございます☆
わざわざお越しくださってありがとうございます(TдT)!
ひまつぶしで良いので時間がある時にいらっしゃってくださいませ♪
今年もよろしくお願いしますね♪
遠麗 | 2008.01.05(土) 22:40 | URL | コメント編集

●管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2008.01.04(金) 09:24 |  | コメント編集

●おめでとうございます☆

新年のご挨拶が遅くなってしまい、大変申し訳ございませんm(__)m
改めまして、あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
今年も何卒よろしくお願いいたしますvv

ちょいとバタバタしておりまして。。。せっかく続きがUPされてるというのに読む時間がないという(号泣)
また時間を見つけて読みふけりにまいりますので〜。
本日はご挨拶のみにて失礼いたしますm(__)m
水城 | 2008.01.03(木) 15:57 | URL | コメント編集

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