2008.01/19(Sat)
君に初恋、桜色。4−1
chapter4−1
秋家はマフラーに顔を埋めるようにして、スーパーの出入り口から自分の車まで、ほんの10メートルくらいの距離を急いで走った。
秋家は寒いのがとても苦手である。車なのにそこまで厚着しなくても、というくらい冬は完全防寒で外に出る。たとえ車でも、暖房をつけて車内が暖まるまでは寒いし、車から建物の中までの移動間も寒い。
そんな自分が1番寒い、と我ながら情けなくも思うけれど、秋家は若干冷え性気味で、あまりに寒いと手や足の先が冷たくて感覚がなくなってくる。男の冷え性はめずらしいぶん、女性よりもタチが悪いらしい。
「はぁー、寒い……」
やっと車に乗り込み、すぐにエンジンをかけて暖房をつける。
今日は店を閉めてから、深夜12時まで開いているこのスーパーまで買い物に来た。1週間分をだいたい目算し、大量に食料品や生活用品を買い込んだ。
できるだけ外に出なくてすむよう、冬はいつも食べ物を蓄えて部屋にこもる。
(虫みたいだな、俺……)
どこかの昆虫のような気分で冷たい両手をこすり合わせ、温かい風の出てきたエアコンの吹き出し口に手を当てた。そろそろ車出そうかな、と思った時、コートのポケットに入れてある携帯が突然鳴った。
「……!」
ビクッと、秋家は身を強張らせる。
ドキドキと心臓が震えて、せっかく温まった体が冷えそうだと思った。
(またメール……)
電話ではなく、メール着信を知らせるその音に、秋家はポケットに手を入れ携帯を取り出す。メールフォルダを開き、恐る恐る送信者の名前を見ると、予想通りの人物にぞくりと背中が粟立った。
メールは、西澤の命日の前日にベッドを共にした青年、久家からのものだった。
(今日は、なに……?)
彼と寝た次の日、1人で酒を飲んでいる時に電話がかかってきたが、迷っているうちにその電話は切れてしまった。その後秋家からかけ直すこともせず、熱で寝込んでいる間はかかってこなかったので忘れていたら、仕事に出るようになったその日から今日までの間、毎日メールが来るようになった。
電話はかけてこないのに、メールだけを毎日送ってくるのだ。
だが秋家は、久家に一度も返信していない。なぜなら、一番最初に来たメールの文章が、『会いたい。セックスしたい』のたったこれだけだったのだ。確かに自分達はセックスしか知らない関係だけど、いくらなんでもこれはないんじゃないか、と不快になり、何も返事をしなかった。
そしたら翌日も同じ時間、夜の10時半前後にまたメールを送ってきて、こんどは『ヤらせてよ』という一言だけだった。秋家はまたムッとして無視をした。そしたら何を考えているのか、それから毎日夜の10時半前後にメールを送ってくるようになって、そしてその文章は段々と、卑猥で乱暴になってきた。
『ヤらせてよ』が『ヤらせろ』になり、その数日後には『あんたのアソコに入れてやるから』になり――この辺りから秋家は怒りではなく恐怖を覚えるようになった。そして内容は徐々に下品になっていき、昨日来たメールには眩暈すらしそうだった。
『あんたの尻、俺のちんこ欲しがってんだろ』
思わず携帯を放り投げてしまったほど、気持ち悪くて怖かった。
一体どうして、一度しか会っていない相手にここまでするのかわからない。それに電話に出なかったのも一度だけで、なにも何度も無視し続けたわけではないのに、どうして自分にここまで――。
メールアドレスを変えようとも考えたが、電話番号を知られているし、何より勝手に変えたことで久家の行動がひどくなったらまずいと思った。
アドレスを変えて着信拒否にすれば問題ないのかもしれないが、そうしたところで確実に安心という保障もない。名前と携帯番号から、もしも住所の割り出しをされたらどうしよう……できるかどうかは知らないが、秋家には『絶対されない』と言いきることができない。
だって若い男は怖い。どこまでやるか、想像がつかない。
それならば、嫌がらせメールを送って満足しているのならば、やらせておいた方がましだと思った。メールも電話も通じなくなって、果たして彼は何をするだろう、と見えない恐怖に怯えるより、少なくともメールという形で行動を把握できている間は、わからないよりは安心できる。
だから秋家は、我慢してメールを受け取るようにしている。そのうち飽きてくれるのを、待っているのだ。
(やだな、見たくない……)
怖いなら見なければよいのだが、もしかして、本当に用事だったらいけない、とお人好しなことを考えてしまって、見ないなら見ないで気になってしまう。
ままよ、とボタンを押すと、いつものように短い文章。そしてそれを読んだ秋家は目を見開き、昨日同様、放り投げるように携帯を足元に落とした。
『あんたのその始末におえない尻、裂けるくらいヤってやる』
がたがたと体が震えて、涙が出そうになった。
どうしてこんなこと、あの男に言われなきゃいけないんだ――!
秋家は手で口元を覆い下を向き、開いたままマットの上に転がっている携帯を見つめる。明るかったディスプレイは暗くなり、ひどく無機質に見えた。
次第に目の前に、じわりと水の膜が張る。ぽたり、と落ちた雫は、携帯を濡らすことなくマットに染みを作った。
秋家はしばらく、駐車場の車の中で、動けなかった。
【More・・・】
11月も終わりになると、夜は冷え込みが厳しくなる。秋家はマフラーに顔を埋めるようにして、スーパーの出入り口から自分の車まで、ほんの10メートルくらいの距離を急いで走った。
秋家は寒いのがとても苦手である。車なのにそこまで厚着しなくても、というくらい冬は完全防寒で外に出る。たとえ車でも、暖房をつけて車内が暖まるまでは寒いし、車から建物の中までの移動間も寒い。
そんな自分が1番寒い、と我ながら情けなくも思うけれど、秋家は若干冷え性気味で、あまりに寒いと手や足の先が冷たくて感覚がなくなってくる。男の冷え性はめずらしいぶん、女性よりもタチが悪いらしい。
「はぁー、寒い……」
やっと車に乗り込み、すぐにエンジンをかけて暖房をつける。
今日は店を閉めてから、深夜12時まで開いているこのスーパーまで買い物に来た。1週間分をだいたい目算し、大量に食料品や生活用品を買い込んだ。
できるだけ外に出なくてすむよう、冬はいつも食べ物を蓄えて部屋にこもる。
(虫みたいだな、俺……)
どこかの昆虫のような気分で冷たい両手をこすり合わせ、温かい風の出てきたエアコンの吹き出し口に手を当てた。そろそろ車出そうかな、と思った時、コートのポケットに入れてある携帯が突然鳴った。
「……!」
ビクッと、秋家は身を強張らせる。
ドキドキと心臓が震えて、せっかく温まった体が冷えそうだと思った。
(またメール……)
電話ではなく、メール着信を知らせるその音に、秋家はポケットに手を入れ携帯を取り出す。メールフォルダを開き、恐る恐る送信者の名前を見ると、予想通りの人物にぞくりと背中が粟立った。
メールは、西澤の命日の前日にベッドを共にした青年、久家からのものだった。
(今日は、なに……?)
彼と寝た次の日、1人で酒を飲んでいる時に電話がかかってきたが、迷っているうちにその電話は切れてしまった。その後秋家からかけ直すこともせず、熱で寝込んでいる間はかかってこなかったので忘れていたら、仕事に出るようになったその日から今日までの間、毎日メールが来るようになった。
電話はかけてこないのに、メールだけを毎日送ってくるのだ。
だが秋家は、久家に一度も返信していない。なぜなら、一番最初に来たメールの文章が、『会いたい。セックスしたい』のたったこれだけだったのだ。確かに自分達はセックスしか知らない関係だけど、いくらなんでもこれはないんじゃないか、と不快になり、何も返事をしなかった。
そしたら翌日も同じ時間、夜の10時半前後にまたメールを送ってきて、こんどは『ヤらせてよ』という一言だけだった。秋家はまたムッとして無視をした。そしたら何を考えているのか、それから毎日夜の10時半前後にメールを送ってくるようになって、そしてその文章は段々と、卑猥で乱暴になってきた。
『ヤらせてよ』が『ヤらせろ』になり、その数日後には『あんたのアソコに入れてやるから』になり――この辺りから秋家は怒りではなく恐怖を覚えるようになった。そして内容は徐々に下品になっていき、昨日来たメールには眩暈すらしそうだった。
『あんたの尻、俺のちんこ欲しがってんだろ』
思わず携帯を放り投げてしまったほど、気持ち悪くて怖かった。
一体どうして、一度しか会っていない相手にここまでするのかわからない。それに電話に出なかったのも一度だけで、なにも何度も無視し続けたわけではないのに、どうして自分にここまで――。
メールアドレスを変えようとも考えたが、電話番号を知られているし、何より勝手に変えたことで久家の行動がひどくなったらまずいと思った。
アドレスを変えて着信拒否にすれば問題ないのかもしれないが、そうしたところで確実に安心という保障もない。名前と携帯番号から、もしも住所の割り出しをされたらどうしよう……できるかどうかは知らないが、秋家には『絶対されない』と言いきることができない。
だって若い男は怖い。どこまでやるか、想像がつかない。
それならば、嫌がらせメールを送って満足しているのならば、やらせておいた方がましだと思った。メールも電話も通じなくなって、果たして彼は何をするだろう、と見えない恐怖に怯えるより、少なくともメールという形で行動を把握できている間は、わからないよりは安心できる。
だから秋家は、我慢してメールを受け取るようにしている。そのうち飽きてくれるのを、待っているのだ。
(やだな、見たくない……)
怖いなら見なければよいのだが、もしかして、本当に用事だったらいけない、とお人好しなことを考えてしまって、見ないなら見ないで気になってしまう。
ままよ、とボタンを押すと、いつものように短い文章。そしてそれを読んだ秋家は目を見開き、昨日同様、放り投げるように携帯を足元に落とした。
『あんたのその始末におえない尻、裂けるくらいヤってやる』
がたがたと体が震えて、涙が出そうになった。
どうしてこんなこと、あの男に言われなきゃいけないんだ――!
秋家は手で口元を覆い下を向き、開いたままマットの上に転がっている携帯を見つめる。明るかったディスプレイは暗くなり、ひどく無機質に見えた。
次第に目の前に、じわりと水の膜が張る。ぽたり、と落ちた雫は、携帯を濡らすことなくマットに染みを作った。
秋家はしばらく、駐車場の車の中で、動けなかった。
●しぐなるあさま
遠麗 | 2008.01.20(日) 21:05 | URL | コメント編集
●れおんさま
おかえりなさいww
なんかえらい方向になっちゃってます!
某ゲームの影響で頭の中がごっちゃごちゃですよw
でもこっちには影響させないようにしないと、とんでもないことになっちゃいますからね♪
またお越しください☆
なんかえらい方向になっちゃってます!
某ゲームの影響で頭の中がごっちゃごちゃですよw
でもこっちには影響させないようにしないと、とんでもないことになっちゃいますからね♪
またお越しください☆
遠麗 | 2008.01.20(日) 21:02 | URL | コメント編集
●お久しぶりです^^
店長大変なコトになってますね(´・ω・`)
愛憎渦巻く大人の恋愛って感じです(何?
ハル君達の時とはまた違う秋家の純粋さと久家の得体の知れない怖さにドキドキですよ(*´ω`)
私より年上なんですけど、なんかだんだん店長がかわいく見えてきました(笑
愛憎渦巻く大人の恋愛って感じです(何?
ハル君達の時とはまた違う秋家の純粋さと久家の得体の知れない怖さにドキドキですよ(*´ω`)
私より年上なんですけど、なんかだんだん店長がかわいく見えてきました(笑
●お久しぶりでございます♪
久しぶりのコメントです☆
怖いよ〜(ブルブル)
でも実際こういう男いるんですよね…(遠い目)
人ごととは思えないので秋家さんに感情移入して読んでしまいました★
頑張れ、秋家さん!!
そして遠麗さんも、頑張ってくださいね(^_-)-☆
怖いよ〜(ブルブル)
でも実際こういう男いるんですよね…(遠い目)
人ごととは思えないので秋家さんに感情移入して読んでしまいました★
頑張れ、秋家さん!!
そして遠麗さんも、頑張ってくださいね(^_-)-☆
れおん | 2008.01.20(日) 01:56 | URL | コメント編集
コメントを投稿する
| BLOGTOP |






店長、可愛いですよね(自分で言うな…)(・ω・)
なんかある意味晴希よりも乙女じゃないか、なんて最近思いますww
アダルトにするつもりだったのに…
お暇な時、またお越しください♪
私も伺います〜☆