2008.02/14(Thu)
君に初恋、桜色。7−2
chapter7−2
「すっごーい!想像以上でビックリしちゃった。美人だっつーからどんな人かと思ったけど、ホントにきれいだねぇ。あんた何するつもりか知んないけど、あんまり苛めたらかわいそーだよ?」
そうは言いながらも、どこか楽しそうに笑っているのは、ドアの前に立っていた女の人だ。若い女性向けファッション雑誌からそのまま抜け出てきたような、いかにもギャルといった風貌の彼女は、久家を見上げてやたら楽しそうに笑っている。
「別に、苛めるわけじゃねーし。お前もういいよ、サンキュな」
「あいよっ。これで貸し借りなしだね。んじゃまたね、賢志」
「ああ」
彼女が『ケンジ』と言ったことに一瞬ドキッとしたが、久家が賢志という名前だったことをすぐに思い出した。
とても機嫌が良さそうに、秋家にもそれじゃ、などと手を振って去っていく女の人の後ろ姿を見て、あの子は久家に頼まれて、ドアをノックしたのだと気がついた。
秋家を油断させ、鍵を開けさせるために。
(あれだけ気をつけろって言われたのに……!)
自分の警戒心の甘さに歯噛みしたい思いになるが、今更どうしようもない。
「秋家さーん」
頭上からの声に、ビクッと肩が竦んだ。恐る恐る見上げると、さっきまで浮かべていた笑顔は消えうせ、鋭い目で秋家を睨み下ろしている。
怖くて、こくりと小さく喉が鳴った。
理不尽極まりない勝手な久家の行動に、なぜ自分がこうも怯えなければならないのか、いくらおかしいとは思っても、感じる恐怖が消えてくれるわけではない。
秋家が目を逸らして下を向くと、久家はぽんと秋家の肩を押した。よろけそうになりながら店の中に押し込まれ、久家も中に入ってくると、勝手にドアの鍵をかけた。その施錠の音に、ビクッと身が竦む。
裏口まで走って自宅に逃げようかとも思ったが、それでもし店に何かされて営業できなくなったらと考えると、それもできなかった。それにそんなことをしても、今この場をしのげるだけで、おそらくまた同じことが起こる。
(怖いけど……なんとか、するしかない……!)
秋家だって、一応男だ。心も体も強くはないけれど、怯えているだけでは何も解決しない。こうなってしまったらもう、覚悟を決めるしかない。今までは家に来られるのが嫌で言いなりになっていたが、結局ここまで来られてしまったのだ。逆にもう、弱みがなくなったと思えばいい。
もし暴力をふるわれたら、勝てなくてもできるだけ応戦してやろうと思った。
幸い、久家は背が高いといっても、おそらく180cmまでもはないと思う。それに横もそんなにあるわけではなく、むしろ細いといっていい体つきだ。なんとか、一方的にやられるのだけは避けられるかもしれない。
久家は鍵をかけた後、じりじりと秋家との距離をつめてくる。反射的に後ろに下がると、テーブル席のソファにドンと体を突き飛ばされた。
「いた……っ…」
後ろの壁に頭をぶつけて思わず声を上げてしまったが、慌てて体を起こした。すると久家はソファに乗りあがってきて、秋家の目の前まで近寄ってくる。
「女なら油断すんだね。俺なら絶対入れないだろーから、ダチに頼んだんだけど。まぁそれよりさ、昨日、勝手に電話きって、どういうつもり?」
壁と自分の体の間に秋家を閉じ込めて、久家は尋問する。どういうつもりと聞かれても、電話を切ったのは石富なので、秋家には何も答えられない。適当な言い訳も見つからず黙っていると、ぐいっと顎を掴まれて顔を持ち上げられた。
「あぅ……っ」
「何黙ってんの、ムカつく。穏やかで優しくてきれいな秋家さん。ちゃんと答えてよ」
久家はわざと強調して、秋家が普段よく言われる“褒め言葉”を並べた。むろん額面通りに受け取れるような物言いではなく、口調は完全に嫌味だった。
「優しくてきれいだけど、夜になるとエッチなんてさ。あんたホント完璧だよね。そりゃ夢中になるっつーの。最初ヤった時はさ、さすがに俺もハマりそうになったもんな」
「……?…っ…いたっ」
久家の言葉に違和感を覚え不思議に思っていると、ぎりっと顎を掴む力を強くされた。頬を親指と4本の指で挟むように掴まれて、口の中が痛くなる。後頭部が壁にがんがん当たって、痛くて涙が出そうだった。
(なに、言ってんだろ……なんの話、してるの……?)
久家の言っていることが不思議だった。一度寝ただけで、会ったのも2回しかないのに、なんだかそれ以上に秋家のことを知っている風に聞こえる。『そりゃ夢中になる』とは、一体なんの話だろう。
「ホントむかつく」
久家はそう言うと、秋家が着ているジャージの前のファスナーを、一気に引き下ろした。
「な……!」
いきなり脱がされそうになり、反射的に両手で久家の体を押し返そうとするが、やはり力ではかなわない。顎を掴まれている手をばしばし叩いたら、その手で顔を思い切り平手打ちされた。
「グーじゃないだけマシだと思えよ」
口の中が切れて、血の味がした。
本当に泣きそうになりながら、だが負けたくないと思い反抗を試みる。胸倉を掴んでやろうと飛びかかるが、その両手を掴まれてしまい、反対の手で髪を掴まれて頭をソファに押さえつけられた。
「痛い……っ」
髪の毛が千切れそうなほど掴まれ、両手を拘束していた方の手が離されたと思ったら、その手でもう一度頬を叩かれた。痛くて、力の無い自分が情けなくて、じわりと涙が浮かぶ。久家は秋家のジャージの前を完全にはだけてしまうと、それを腕に絡ませるようにして両腕を拘束した。
「離してよ…っ」
体の上に乗られて、腕の自由を奪われて、秋家は脚をばたつかせるが、それもまったく意味を成さない。腕を振り上げて久家を叩こうとしても、簡単に押さえつけられてしまう。
「あのさ、あんまり暴れないでくれる?俺あんたのこと嫌いだから、平気で半殺しくらいやるよ?」
久家は、無表情で言った。その目の冷たさに背中がゾッとして、ただの脅しではなく本気だとわかった。
(なん、なの……)
怖い、と思った。
この男は、昨日電話を勝手にきったことに腹を立てているわけではない。それは単にこの店まで来るきっかけにすぎず、彼は根本的に、秋家に対して憎悪を抱いている。
(どうして……?)
身に覚えもない、ただ一方的に向けられる強い悪意に、秋家の体は凍りついたように動けなくなった。
【More・・・】
久家は手でドアを押さえて、青ざめた顔の秋家を見下ろす。笑顔こそ浮かべているが、目は射るように冷たかった。「すっごーい!想像以上でビックリしちゃった。美人だっつーからどんな人かと思ったけど、ホントにきれいだねぇ。あんた何するつもりか知んないけど、あんまり苛めたらかわいそーだよ?」
そうは言いながらも、どこか楽しそうに笑っているのは、ドアの前に立っていた女の人だ。若い女性向けファッション雑誌からそのまま抜け出てきたような、いかにもギャルといった風貌の彼女は、久家を見上げてやたら楽しそうに笑っている。
「別に、苛めるわけじゃねーし。お前もういいよ、サンキュな」
「あいよっ。これで貸し借りなしだね。んじゃまたね、賢志」
「ああ」
彼女が『ケンジ』と言ったことに一瞬ドキッとしたが、久家が賢志という名前だったことをすぐに思い出した。
とても機嫌が良さそうに、秋家にもそれじゃ、などと手を振って去っていく女の人の後ろ姿を見て、あの子は久家に頼まれて、ドアをノックしたのだと気がついた。
秋家を油断させ、鍵を開けさせるために。
(あれだけ気をつけろって言われたのに……!)
自分の警戒心の甘さに歯噛みしたい思いになるが、今更どうしようもない。
「秋家さーん」
頭上からの声に、ビクッと肩が竦んだ。恐る恐る見上げると、さっきまで浮かべていた笑顔は消えうせ、鋭い目で秋家を睨み下ろしている。
怖くて、こくりと小さく喉が鳴った。
理不尽極まりない勝手な久家の行動に、なぜ自分がこうも怯えなければならないのか、いくらおかしいとは思っても、感じる恐怖が消えてくれるわけではない。
秋家が目を逸らして下を向くと、久家はぽんと秋家の肩を押した。よろけそうになりながら店の中に押し込まれ、久家も中に入ってくると、勝手にドアの鍵をかけた。その施錠の音に、ビクッと身が竦む。
裏口まで走って自宅に逃げようかとも思ったが、それでもし店に何かされて営業できなくなったらと考えると、それもできなかった。それにそんなことをしても、今この場をしのげるだけで、おそらくまた同じことが起こる。
(怖いけど……なんとか、するしかない……!)
秋家だって、一応男だ。心も体も強くはないけれど、怯えているだけでは何も解決しない。こうなってしまったらもう、覚悟を決めるしかない。今までは家に来られるのが嫌で言いなりになっていたが、結局ここまで来られてしまったのだ。逆にもう、弱みがなくなったと思えばいい。
もし暴力をふるわれたら、勝てなくてもできるだけ応戦してやろうと思った。
幸い、久家は背が高いといっても、おそらく180cmまでもはないと思う。それに横もそんなにあるわけではなく、むしろ細いといっていい体つきだ。なんとか、一方的にやられるのだけは避けられるかもしれない。
久家は鍵をかけた後、じりじりと秋家との距離をつめてくる。反射的に後ろに下がると、テーブル席のソファにドンと体を突き飛ばされた。
「いた……っ…」
後ろの壁に頭をぶつけて思わず声を上げてしまったが、慌てて体を起こした。すると久家はソファに乗りあがってきて、秋家の目の前まで近寄ってくる。
「女なら油断すんだね。俺なら絶対入れないだろーから、ダチに頼んだんだけど。まぁそれよりさ、昨日、勝手に電話きって、どういうつもり?」
壁と自分の体の間に秋家を閉じ込めて、久家は尋問する。どういうつもりと聞かれても、電話を切ったのは石富なので、秋家には何も答えられない。適当な言い訳も見つからず黙っていると、ぐいっと顎を掴まれて顔を持ち上げられた。
「あぅ……っ」
「何黙ってんの、ムカつく。穏やかで優しくてきれいな秋家さん。ちゃんと答えてよ」
久家はわざと強調して、秋家が普段よく言われる“褒め言葉”を並べた。むろん額面通りに受け取れるような物言いではなく、口調は完全に嫌味だった。
「優しくてきれいだけど、夜になるとエッチなんてさ。あんたホント完璧だよね。そりゃ夢中になるっつーの。最初ヤった時はさ、さすがに俺もハマりそうになったもんな」
「……?…っ…いたっ」
久家の言葉に違和感を覚え不思議に思っていると、ぎりっと顎を掴む力を強くされた。頬を親指と4本の指で挟むように掴まれて、口の中が痛くなる。後頭部が壁にがんがん当たって、痛くて涙が出そうだった。
(なに、言ってんだろ……なんの話、してるの……?)
久家の言っていることが不思議だった。一度寝ただけで、会ったのも2回しかないのに、なんだかそれ以上に秋家のことを知っている風に聞こえる。『そりゃ夢中になる』とは、一体なんの話だろう。
「ホントむかつく」
久家はそう言うと、秋家が着ているジャージの前のファスナーを、一気に引き下ろした。
「な……!」
いきなり脱がされそうになり、反射的に両手で久家の体を押し返そうとするが、やはり力ではかなわない。顎を掴まれている手をばしばし叩いたら、その手で顔を思い切り平手打ちされた。
「グーじゃないだけマシだと思えよ」
口の中が切れて、血の味がした。
本当に泣きそうになりながら、だが負けたくないと思い反抗を試みる。胸倉を掴んでやろうと飛びかかるが、その両手を掴まれてしまい、反対の手で髪を掴まれて頭をソファに押さえつけられた。
「痛い……っ」
髪の毛が千切れそうなほど掴まれ、両手を拘束していた方の手が離されたと思ったら、その手でもう一度頬を叩かれた。痛くて、力の無い自分が情けなくて、じわりと涙が浮かぶ。久家は秋家のジャージの前を完全にはだけてしまうと、それを腕に絡ませるようにして両腕を拘束した。
「離してよ…っ」
体の上に乗られて、腕の自由を奪われて、秋家は脚をばたつかせるが、それもまったく意味を成さない。腕を振り上げて久家を叩こうとしても、簡単に押さえつけられてしまう。
「あのさ、あんまり暴れないでくれる?俺あんたのこと嫌いだから、平気で半殺しくらいやるよ?」
久家は、無表情で言った。その目の冷たさに背中がゾッとして、ただの脅しではなく本気だとわかった。
(なん、なの……)
怖い、と思った。
この男は、昨日電話を勝手にきったことに腹を立てているわけではない。それは単にこの店まで来るきっかけにすぎず、彼は根本的に、秋家に対して憎悪を抱いている。
(どうして……?)
身に覚えもない、ただ一方的に向けられる強い悪意に、秋家の体は凍りついたように動けなくなった。
●唯香様
遠麗 | 2008.02.16(土) 17:53 | URL | コメント編集
●うわ〜ん(>_<)
店長さんが大変〜〜っ!!剣二助けに来て〜〜〜っ!!(号泣)
しかし、この展開……勝手に色々と妄想が広がって、脳内えらいこっちゃ状態になっております(なんのこっちゃ…)
続きを楽しみにしておりますので〜vv
しかし、この展開……勝手に色々と妄想が広がって、脳内えらいこっちゃ状態になっております(なんのこっちゃ…)
続きを楽しみにしておりますので〜vv
水城 | 2008.02.16(土) 10:06 | URL | コメント編集
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そろそろ終盤です!
がんばって書き上げますので、またお越しくださいませね♪
今回アップしたの、剣二さんがちょっと男前w
もらってやってください♪w