2008.02/25(Mon)
君に初恋、桜色。8−3
chapter8−3
「感謝しろだとか、そんな恩着せがましいことは言わねーよ!でもな……おかしいとか、嬉しくないとか、そんなこと言うな!頼むから、言わないでくれ……そうじゃねーと、俺が、ここにいる意味が、なくなっちまうだろーが……!」
すがりつく様に、石富は顔を俯けて、秋家の胸にとん、とおでこをぶつけた。
その触れた部分から、直接握られてでもいるかのように、心臓がぎゅっと潰れたみたいに痛くなる。
石富の声が、言葉が、とても苦しい。
秋家の気持ちなど知るわけもない石富にしたら、『重い』も『嬉しくない』も、言葉通りの意味に受け取るのも当然のことだ。
秋家を選んでくれた石富の気持ちを、いらないと拒否しているようなもので、それは石富が、ウィンド・ベルの厨房に立っている現状をも否定しかねない。
でも、秋家はもう、石富が望んでいる形で側にいることができない。
石富が『親友だから』という理由でここまでできる人だと、知ってしまった。今までごまかしながら友達を演じてきたけれど、こんなに強い友情に応えきれるほどには、嘘の親友に成りきれない。
「……ごめんね、剣二……」
「………」
「でも、俺はホントに……そういうのは、欲しくないんだ……」
「……!お前…っ……まだ、言うのか……!」
俯けていた顔を上げ、石富は再び怒りに表情を歪める。ぎり、と肩を押さえつけられている手に力がこもり、そのあまりの強さに秋家は顔をしかめた。
「いたっ、痛い……」
石富はハッとした顔になり、慌てて手を離すと、そのまま秋家の上から体をのかせた。
「わりぃ……さっきお前、襲われたのにな……すまん、おんなじことしちまった……」
石富はそう言いながら、背を向けてあぐらをかいた。秋家は起き上がり、その背中をじっと見つめる。
拒絶されているみたいで少し悲しくなったけれど、これから言う事を考えたら、顔を見られないからこの方がいいかな、と思った。そして、これで何もかも終わるな、とも思った。
(ごめんね、剣二……)
親友になってあげられなくて。
たくさん、嘘もついたから、今日は全部話して、許してもらって、そして、終わりにしよう。
初恋が20年、少し、長過ぎたみたいだ。
「……ねぇ、剣二。どうして、ずっと聞かなかったの?高校卒業してからのこと……」
ぴくっと、石富の肩が微かに揺れた。でも、背を向けたまま、こちらを向くことはない。
「……昨日、言ったよな。お前が言いたくないことなら、そっとしておいてやりたいって。お前が話したくないことなら、無理させたくないって……」
「そ、だね……言ってたね。それは、友達だから……だよね」
「………そう、だな……」
ずきん、とした。でも、こんなことでいちいち傷ついてなどいられない。
必死に気を奮い立たせ、大きな背中に向かって言葉をつづる。
「そう、だよね。でも、俺は、剣二の友達には、なれない……ごめんなさい」
「……どういう、意味だよ」
「あのね、俺は……一緒にいるのが、苦しかった。ずっと、中学の時も、高校の時も。彼女紹介されたり、俺より彼女と遊ぶの優先されたりすると、すごく、つらかったんだ………だから、高校卒業したら、離れようって決めてた。それで、苦しいのなくなるかなって、思ったんだ……」
ここまで言えば、おのずと理解もできるだろう。秋家がゲイであることを、石富は知っているのだから。そしてその対象が自分であったと知って、今、どんな気持ちだろう。
裏切られたと思うだろうか。友達の性癖に偏見は持っていなくても、直接自分がそういう感情を向けられるのは、やはり気持ち悪いと思うだろうか。
「忘れたかったんだ……他の人好きになって、楽になりたかった。だから大学嘘ついた……本当はね、もう会わないでいよう、って思ってたよ。でも、西澤さんに会って、逃げただけじゃダメなんだって、8年経ってやっとわかった。それでね、剣二のうち、電話したんだ。好きって、言うつもりだったんだけど、奥さん出て、結婚してるんじゃ言えないやって……そしたら、お店一緒にやるようになってさ、どうしたらいいのか、もっとわかんなくなった……」
何も言わない背中に向かって、秋家は想いを語った。
ずっと心の奥深くに押し込められていたものが、少しずつ流れ出て、それは最も伝えたかった人のところに流れ着く。受け入れてもらえないことはわかているけど、でもせめて、わかってくれたらいいな、と思った。
「……ずっとね、何回も、謝ろうと思ったよ。でも、そうなると、好きってことも言わなくちゃいけないから、困ったりして、だから、言えなかったんだけど……あの、ごめんなさい。逃げたことだけじゃなくて、いっぱい、嘘ついたことも、なんか色々、迷惑かけたことも……あの、それで……俺は、剣二が、そういう意味で、好きなので……友達には、なれない、です……」
最後にもう一度、ごめんなさいと付け加えた。
たどたどしくもなんとか気持ちを伝え終え、ふぅと小さく震える息を吐く。胸がドクドクと鳴っていて、黙ったままの背中が、とても怖かった。
「……あの、剣二……?ごめんね、気持ち、悪いよね……親友って思ってた男に、好きなんて言われて……あの、気にしなくていいよ……?ちゃんとふって……」
「俺はな、なお」
ちゃんとふってくれれば、諦められるから。そう言おうと思ったら、黙っていた石富が突然声を発した。びくっとして反射的に背筋を伸ばし、続く言葉を待つ。
だが石富はくるりとこちらを向き、膝立ちでこちらに近づいたかと思うと、秋家の手をぐいっと引っ張った。なに、と思う間もなく、そのまま胸の中に倒れこむと、長い腕にすっぽりと抱き締められて、石富の体温に閉じ込められた。
何が起こったのかわからず、思考が追いついてこない。自分の心臓が、まるで耳元にあるかのように、激しく鳴っていた。
そして、本当に耳を当てている石富の胸からも、少し速い心音が、とくとくと聞こえた。
【More・・・】
秋家に跨った石富は、強い力で肩を押さえつけ、怒りを湛えた目でまっすぐ秋家を睨み下ろしている。だがその目には、怒りだけでなく、どこか、寂しげな色が滲んでいるように見えるのは、単なる気のせい、だろうか。「感謝しろだとか、そんな恩着せがましいことは言わねーよ!でもな……おかしいとか、嬉しくないとか、そんなこと言うな!頼むから、言わないでくれ……そうじゃねーと、俺が、ここにいる意味が、なくなっちまうだろーが……!」
すがりつく様に、石富は顔を俯けて、秋家の胸にとん、とおでこをぶつけた。
その触れた部分から、直接握られてでもいるかのように、心臓がぎゅっと潰れたみたいに痛くなる。
石富の声が、言葉が、とても苦しい。
秋家の気持ちなど知るわけもない石富にしたら、『重い』も『嬉しくない』も、言葉通りの意味に受け取るのも当然のことだ。
秋家を選んでくれた石富の気持ちを、いらないと拒否しているようなもので、それは石富が、ウィンド・ベルの厨房に立っている現状をも否定しかねない。
でも、秋家はもう、石富が望んでいる形で側にいることができない。
石富が『親友だから』という理由でここまでできる人だと、知ってしまった。今までごまかしながら友達を演じてきたけれど、こんなに強い友情に応えきれるほどには、嘘の親友に成りきれない。
「……ごめんね、剣二……」
「………」
「でも、俺はホントに……そういうのは、欲しくないんだ……」
「……!お前…っ……まだ、言うのか……!」
俯けていた顔を上げ、石富は再び怒りに表情を歪める。ぎり、と肩を押さえつけられている手に力がこもり、そのあまりの強さに秋家は顔をしかめた。
「いたっ、痛い……」
石富はハッとした顔になり、慌てて手を離すと、そのまま秋家の上から体をのかせた。
「わりぃ……さっきお前、襲われたのにな……すまん、おんなじことしちまった……」
石富はそう言いながら、背を向けてあぐらをかいた。秋家は起き上がり、その背中をじっと見つめる。
拒絶されているみたいで少し悲しくなったけれど、これから言う事を考えたら、顔を見られないからこの方がいいかな、と思った。そして、これで何もかも終わるな、とも思った。
(ごめんね、剣二……)
親友になってあげられなくて。
たくさん、嘘もついたから、今日は全部話して、許してもらって、そして、終わりにしよう。
初恋が20年、少し、長過ぎたみたいだ。
「……ねぇ、剣二。どうして、ずっと聞かなかったの?高校卒業してからのこと……」
ぴくっと、石富の肩が微かに揺れた。でも、背を向けたまま、こちらを向くことはない。
「……昨日、言ったよな。お前が言いたくないことなら、そっとしておいてやりたいって。お前が話したくないことなら、無理させたくないって……」
「そ、だね……言ってたね。それは、友達だから……だよね」
「………そう、だな……」
ずきん、とした。でも、こんなことでいちいち傷ついてなどいられない。
必死に気を奮い立たせ、大きな背中に向かって言葉をつづる。
「そう、だよね。でも、俺は、剣二の友達には、なれない……ごめんなさい」
「……どういう、意味だよ」
「あのね、俺は……一緒にいるのが、苦しかった。ずっと、中学の時も、高校の時も。彼女紹介されたり、俺より彼女と遊ぶの優先されたりすると、すごく、つらかったんだ………だから、高校卒業したら、離れようって決めてた。それで、苦しいのなくなるかなって、思ったんだ……」
ここまで言えば、おのずと理解もできるだろう。秋家がゲイであることを、石富は知っているのだから。そしてその対象が自分であったと知って、今、どんな気持ちだろう。
裏切られたと思うだろうか。友達の性癖に偏見は持っていなくても、直接自分がそういう感情を向けられるのは、やはり気持ち悪いと思うだろうか。
「忘れたかったんだ……他の人好きになって、楽になりたかった。だから大学嘘ついた……本当はね、もう会わないでいよう、って思ってたよ。でも、西澤さんに会って、逃げただけじゃダメなんだって、8年経ってやっとわかった。それでね、剣二のうち、電話したんだ。好きって、言うつもりだったんだけど、奥さん出て、結婚してるんじゃ言えないやって……そしたら、お店一緒にやるようになってさ、どうしたらいいのか、もっとわかんなくなった……」
何も言わない背中に向かって、秋家は想いを語った。
ずっと心の奥深くに押し込められていたものが、少しずつ流れ出て、それは最も伝えたかった人のところに流れ着く。受け入れてもらえないことはわかているけど、でもせめて、わかってくれたらいいな、と思った。
「……ずっとね、何回も、謝ろうと思ったよ。でも、そうなると、好きってことも言わなくちゃいけないから、困ったりして、だから、言えなかったんだけど……あの、ごめんなさい。逃げたことだけじゃなくて、いっぱい、嘘ついたことも、なんか色々、迷惑かけたことも……あの、それで……俺は、剣二が、そういう意味で、好きなので……友達には、なれない、です……」
最後にもう一度、ごめんなさいと付け加えた。
たどたどしくもなんとか気持ちを伝え終え、ふぅと小さく震える息を吐く。胸がドクドクと鳴っていて、黙ったままの背中が、とても怖かった。
「……あの、剣二……?ごめんね、気持ち、悪いよね……親友って思ってた男に、好きなんて言われて……あの、気にしなくていいよ……?ちゃんとふって……」
「俺はな、なお」
ちゃんとふってくれれば、諦められるから。そう言おうと思ったら、黙っていた石富が突然声を発した。びくっとして反射的に背筋を伸ばし、続く言葉を待つ。
だが石富はくるりとこちらを向き、膝立ちでこちらに近づいたかと思うと、秋家の手をぐいっと引っ張った。なに、と思う間もなく、そのまま胸の中に倒れこむと、長い腕にすっぽりと抱き締められて、石富の体温に閉じ込められた。
何が起こったのかわからず、思考が追いついてこない。自分の心臓が、まるで耳元にあるかのように、激しく鳴っていた。
そして、本当に耳を当てている石富の胸からも、少し速い心音が、とくとくと聞こえた。
●米神さま
遠麗 | 2008.02.26(火) 22:32 | URL | コメント編集
●唯香さま
わわっ、いつも熱いコメントありがとうございます〜!
唯香さまお望みの展開になっておる自信はございませんが(…)、今回アップ分、変な切れ方しちゃいました..・ヾ(。 ̄□ ̄)
最後の秋家のセリフに自分崩壊…
はずかし…!
これからがんばりまする☆
本当にいつもありがとうございます。・゚゚・(>_<;)・゚゚・。
唯香さまお望みの展開になっておる自信はございませんが(…)、今回アップ分、変な切れ方しちゃいました..・ヾ(。 ̄□ ̄)
最後の秋家のセリフに自分崩壊…
はずかし…!
これからがんばりまする☆
本当にいつもありがとうございます。・゚゚・(>_<;)・゚゚・。
遠麗 | 2008.02.26(火) 22:26 | URL | コメント編集
●
わわわ!
ついに秋家さん告白しちゃいましたね〜。
石富さんの答えが気になって、私の心臓もバクバクいってます!
また更新頑張ってくださいね(*´▽`*)
楽しみにしています♪
ついに秋家さん告白しちゃいましたね〜。
石富さんの答えが気になって、私の心臓もバクバクいってます!
また更新頑張ってくださいね(*´▽`*)
楽しみにしています♪
●たまらず!!
言った〜〜〜っ!!店長、やっと言ってくれたのね(T^T)
前回に続き大興奮です〜vv次、次〜〜ない〜〜っ(>_<)(壊)
パソ上げてる時間ない……けど続きが気になるのぉぉおおお!…と、思わず携帯にアドレス登録してしまったのは…ええ、私です(爆)
剣二、いっちゃって!!と、拳握りしめながら、次回めっちゃ楽しみにしておりますのでvvv
前回に続き大興奮です〜vv次、次〜〜ない〜〜っ(>_<)(壊)
パソ上げてる時間ない……けど続きが気になるのぉぉおおお!…と、思わず携帯にアドレス登録してしまったのは…ええ、私です(爆)
剣二、いっちゃって!!と、拳握りしめながら、次回めっちゃ楽しみにしておりますのでvvv
水城 | 2008.02.25(月) 09:06 | URL | コメント編集
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石富の答えは、なんかパッとしないものになってしまいましたw
やつも長年葛藤していたので、単純に「俺も好きだ」という流れにはなりませんでした…w
がんばりますので、またお越しくださいませ☆